ストーリー– category –
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副業サイトを開いて、自分には何もないと思った夜
夜のリビングは、いつもより少し静かだった。子どもたちはもう寝ていて、廊下の奥から小さな寝息のような気配だけがした。テーブルの上には、学校のプリントと、飲みかけのお茶が置かれていた。 ぼくはノートパソコンを開いた。画面の明かりが、テーブルの... -
家族で外食しようと言われて、財布の中を先に見てしまった夜
夕飯の時間を少し過ぎたころだった。リビングには、炊飯器の保温の音だけが小さく残っていた。テーブルの上には、学校からのプリントと、畳みきれていない洗濯物が置いてあった。 「今日、外で食べない?」 妻が何気なく言った。その声は、軽かった。疲れ... -
去年の上着の袖を引っぱった母を、わたしは見ていた
朝、玄関の前で、母が冬物の箱を開けていた。少しだけほこりの匂いがした。箱の中には、去年着ていた上着やマフラーが入っていた。 「寒くなってきたから、これ着てみて」 母はそう言って、紺色の上着をわたしに渡した。去年の冬、何度も着ていた上着だっ... -
スーパーで孫のお菓子だけ残して、自分の分を戻した日
夕方のスーパーは、いつもより少しにぎやかだった。レジの方から、ピッ、ピッ、という音が続いていた。入口の近くでは、カートを押す音が何度も重なっていた。 わたしは買い物カゴを腕にかけて、孫と一緒にお菓子売り場の前に立っていた。孫は小さな手で、... -
給食費のお知らせを冷蔵庫に貼ったまま、何日も見ていた
冷蔵庫の扉に、一枚のプリントが貼ってあった。白い紙だった。上の角が、少しだけ反っていた。 学校からのお知らせだった。給食費の引き落としについて。その文字を、ぼくは何日も前から見ていた。 最初に見たのは、夕飯の支度をしているときだった。妻が... -
習い事をひとつ増やしたいと言われて、カレンダーを見た夜
夕飯のあと、娘が一枚のプリントを持ってきた。少しだけ端が折れていて、ランドセルの奥から引っぱり出したのが分かった。テーブルの上に置かれた紙には、明るい色の文字が並んでいた。 「これ、友だちが行ってるんだって」 娘はそう言って、わたしの顔を... -
エアコンを消したあと、子どもの寝顔を見て迷った夜
寝室のドアを、そっと開けた。部屋の中は、思っていたより涼しかった。エアコンの小さな運転ランプが、暗い部屋の端で光っていた。 子どもは布団の中で眠っていた。片方の足だけ、タオルケットから少し出ていた。枕元には、読みかけの本と、小さなぬいぐる... -
スマホ料金の明細で、子どもの名前のところだけ見つめていた夜
夜、リビングの電気だけがついていた。テーブルの上には、飲みかけのお茶と、学校から持ち帰ったプリントが置かれていた。子どものスマホは、コンセントの近くで静かに充電されていた。 ぼくはスマホを手に取って、料金明細の画面を開いた。見るつもりはあ... -
カゴに入れたヨーグルトを、棚に戻した日
夕方のスーパーは、少しだけ混んでいた。レジの方から、ピッ、ピッ、という音が続いていた。冷蔵棚の前には、仕事帰りの人が数人立っていた。 わたしは買い物カゴを腕にかけたまま、ヨーグルトの棚を見ていた。いつも買っているものが、いつもの場所に並ん... -
塾の案内を見た夜、すぐに「行ってみたら」と言えなかった
夕飯のあと、娘がランドセルから一枚の紙を出した。少し折れた、白いプリントだった。テーブルの上に置かれた瞬間、紙の端がふわっと浮いた。 「これ、友だちが行ってるんだって」 娘は、少しだけ声を弾ませて言った。テレビでは、誰かの笑い声が流れてい...
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